春の風

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右を見ても左を見ても
見慣れたシャッターには
臨時休業の文字はなく
すれ違う白髪まじりの母たちに
あの頃の面影を見つけたくて

立ち寄るのはあの洋菓子屋
煤けた看板を掲げながら
並ぶ数多の宝石たちに
過ぎ行く制服たちも足を止め
懐かしさを背中に残して

夕暮れが暖簾を出す頃
増えるのは履き古した革靴
ぽつりぽつりと彩って
零れる灯りへ耳を向ければ
集う仲間の笑う声と
響く演歌の声高らかに

この町の朝は遅い
この町の夜は早い
この町は生きている
人知れず、時に働き時に休み
日常はみんな町と共にある
さあ行こう私の町へ

―――街へ―――

1/28/2023, 3:48:16 PM