猫背の犬

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真夜中にふと目覚めると世界でひとりきりになった気分になる。静まり返った夜の中におれただひとりだけが存在しているような不思議な感覚。誰も居ないから気楽だ。誰も居ないから寂しい。誰かを見つけたい。誰かにおれを見つけて欲しい。おれはここに居るよ、きみはどこに居ますか。誰宛にもならない言葉は壁に当たってこだまする。そんな虚しさも朝になれば、忘れてしまう。真夜中の出来事は、朝になったら全部忘れてしまうんだ。





もしもし、聞こえますか。そうそう、君。君に話しかけてるよ。朝になったらボクが消えてみんなが帰ってくる。もしも君がボクと同じ真夜中に存在することができるのなら、ボクと遊ぼう。あそこの十字路にある販売機でラムネを買って、それを飲みながら散歩をしよう。きっと楽しいと思う。なんで楽しいかって? ひとりだとつまんないことも、ふたりになると楽しくなるんだってさ。まだ試したことはないからわかんないんだけど、子供の頃、読んだ絵本にそんなようなことが描いてあったんだ。ボクが言ってることを信じれないなら君が真夜中に遊びに来れたときに試してみようか。ボクはずっと真夜中で君のことをじっと待ってるよ。あ、朝が来る。もうお話は終わりにしなきゃ。じゃあ、まあ、とりあえず、いつかね。え? なに? だめだよ、それは。「またね」なんて言えないよ。だってボクたちまだ会ったことないもの。君は面白いなあ。これは全部、夢だよ。君の夢の中の出来事。真夜中の出来事。朝になったら全部忘れてしまうんだよ。

5/17/2023, 1:50:39 PM