コロン、カラン、ポーン、チリン。
私の首にはコップのように小さく、
壺のようなものが左右についている。
生まれた時からあったのだが、
割り箸などで叩いてみると
どんな楽器でも出せないような
不思議で特別な音が出る。
楽しいのは家の中だけで、
外ではショールを巻いてるけど
最近はショール集めにハマってきて、
外でも楽しい思いをしている。
そんなある日、
母から
壺のようなものの切除手術ができる病院を見つけた。
どうしたいかは自分次第だが、
手術するなら早めに連絡をくれ。と、
連絡が来た。
正直、
手術してもいいかなと思った。
毎日髪の毛にまとわりついてうざったいし、
お風呂も寝る時も邪魔だし、
ショールをしていても
不自然に膨らんでいる首周りが変だ。
でも、
何か引っかかる。
モヤモヤして、
考えるのが嫌になってきた。
適当に壺のようなものを叩いていると、
なんだかいつもより綺麗な音が出ていた。
耳に焼き付いて離れないこの音。
そうだ。
壺のようなものがついてる私にとって、
この演奏は私にしか出せない音。
大事にしたい。
音、音、音。
母に手術を断るメッセージを打っている間、
ずっと音と呟いていた。
もう大丈夫。
迷いなんてなくなった。
墓場まで持っていくよ。
翌日、
母に頼んで壺のようなものに
ある一言が書いてあるラベルを貼ってもらった。
"Good Midnight!"
一緒にいい真夜中を過ごそう。
人間じゃないみたいな人間なんて、
そこら中にいるし、
人間って人間がいるわけじゃない。
私はこのまま
ありのままが1番いいんだ。
9/20/2024, 1:03:23 PM