「ねぇ見てこれ!これ拓也(たくや)が見てたドラマじゃない?」
「えっ、マジ?」
俺達は秋の部屋に遊びに集まっている。あと2人は買い出し中。今は秋(あき)に話しかけられてスマホ画面を見ていた。そこには俺が見ていたドラマが映画化するという知らせが載っていた。
「うわっ!マジじゃん!嬉し~」
「これさ、一緒に観に行かない?」
「え?」
俺は急な提案に驚いた。
「いやさ拓也に進められて私も観始めたんだけど、すっごい面白かったから観たいんだよね」
「そう...なんだ」
「あ、ごめん。嫌だった?それとも他の人と行く予定とか...」
「嫌じゃないし、特に一緒に行く人もいないからいいよ」
「本当?やった」
いつにする?と秋と映画を観る計画を立てる。
俺は内心、秋が俺に侵食されているって言ったら気持ち悪いけど染まっている気がして嬉しい。
「おーい聞いてる?」
「ん?ちゃんと聞いてるよ。土曜日の10時駅前でしょ?」
「...よく聞いてたね、拓也にしては珍しい......」
「いつもちゃんと聞いてるよ!いつも聞いてないみたいじゃんか!」
「え~だってー」
あー...こうやって、俺の事だけを考えていてほしい。俺だけを見てほしい。俺を...
「...秋」
「何?」
「俺さ、秋の事」
「ただいま~!雪見だいふく買ってきたよぉ~!」
ガチャッ、と扉を開けて2人は入ってきた。なんというタイミングだ。
「見て見て秋~雪見だいふくの買い占め~」
「4つで買い占めって言うのかな...(笑)」
「甘いなぁ秋。雪見だいふくを4つ買ったら、8つになるんだよ?だから買い占め」
「葉瀬(ようせ)ちゃんの理論はいまいちわかんないねぇ」
「なんでだよ~」
葉瀬は楽しそうに秋に話しかけている。
その様子を見ていると玲人(れいと)が隣に座った。
「俺さ...グリコで負けてお姫様扱いされて帰ってきたんだけど...」
「ちょっと状況がいまいちわからない」
「コンビニ行く時にグリコしたんだよ......そしたら負けちゃって!何でも言うこと聞く約束してたからお姫様扱いされちゃった...」
俺がお姫様扱いしたかったのに...という独り言は聞かなかったことにしておこう。あと具体的には聞かない。長くなるから。
「あ、そういえばさ葉瀬ちゃん、玲人さん。土曜日って空いてる?」
秋が2人にそう問いかける。俺は嫌な予感がした。
「えー?何で?」
「さっき拓也と映画行く話してたんだけど、どうせなら皆で行きたいなって!」
やっぱりか...!
もしかしたらそうなるかも、と考えてはいたがまさか本当にそうなるとは!お願いだから葉瀬、予定あってくれ...!
「おー!...うん!いいよ!特にないと思うし...」
「ちょっと」
言いかけた所で玲人が口を開く。
「...土曜は葉瀬と先に違う約束してるから、一緒に行けない。ごめんね、2人で行ってきなよ」
「え?約束............あ、あー!本当だごめん秋!予定有ったんだったー!!」
「そっかー...残念だけど、映画は2人で観てくるね!」
「うん!感想教えてね!」
俺は2人のぎこちなさを見て、ガッツポーズと感謝を心の中でした。
「じゃあ私達お茶取ってくる~玲人手伝ってー」
「...人使い荒いなぁ」
そう言いながら2人はキッチンへ消えていく。
「残念だったなー......あ」
「え、何?」
「そういえばさっき何言いかけてたの?私が何って?」
「えっ...と...」
俺は秋の事が。
「...秋の“言葉遣い”が綺麗だなーって!!」
「え、何それ」
「ほら!小説とかよく読んでるから言葉遣いが綺麗なんだよ!そう言いたかっただけ!」
「ふーん...そっか、ありがとう」
秋は少し考えるような動きをしたが、悟られてはいないらしい。良かった。
いつか、この言葉の続きが言えたらな。
これは、俺達が付き合うちょっと前の話。
お題 「I LOVE...」
出演 拓也 秋 葉瀬 玲人
1/29/2024, 12:43:59 PM