せつか

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「苦しくなるんだ」
彼はそう言って僅かに視線を逸らしました。

「君のそのまっすぐな、綺麗な青が私には眩しくて、私の汚れた心を見透かされているような気がして·····」
そこで言葉を詰まらせた彼は、俯いたまま黙りこくってしまいます。私はじっと、そんな彼の横顔を見つめて待ち続けました。
彼は私と向き合う事を恐れてはいても、逃げる事はしないと分かっていたからです。
やがて彼は意を決したように顔を上げると、私をまっすぐ見据えて言いました。

「君が私を許すと言うのも、自分にこそ責があると思っているのも知っている。だからこそ、私は言うよ。·····私を許さないで欲しい」
彼は私の目をまっすぐ見つめ返しながら、そう言いました。
――不器用なひと。
許すと言うのだから素直に受け止めればいいのに、自分にはそんな価値は無いと思い込んでいる。
苦しくなると言いながら、私の目を見つめることを止めようとはしない貴方に、許す以外に何が出来るというのでしょう?

本当は、過去の罪も、懐かしい記憶も、家族の思い出も、何もかもを手放して貴方と二人、誰もいない世界へ行ってもいいとさえ思っているのに。

彼の揺れる淡い色をした目を見つめる度に、苦しくなるのは私の方だというのに。

あぁ、本当に·····厄介なひと。


END


「君の目を見つめると」

4/6/2024, 3:59:07 PM