Day.4_『僕と一緒に』
「はぁ……はぁ……!」
「待て!ごらぁ!」
必死に逃げる。後ろから、アイツらの怒号が聞こえる。
「はぁ……はぁ……っ!」
僕は、路地裏に逃げ込み、換気扇の後ろに隠れる。
「クソっ、どこ行きやがった……」
「っ……」
足音が聞こえる。僕は必死に息を殺す。
「まだ近くにいるはずだ。探すぞ」
「あぁ……見つけたら、タダじゃおかねぇ」
そのような会話が聞こえ、徐々に足音も遠くなっていく。やがて聞こえなくなり、僕はそっと換気扇から顔を出す。
「行ったか……はぁ……」
僕は、一気に力が抜け、その場にへたり込む。
僕が足を洗いたいと、懇願した瞬間に「これ」だ。恐らく、見つかれば無事では済まないだろう。
「……逃げなきゃ」
僕はそう呟き、震える足を立たせ、一歩、踏み出したその時だった。
「……ん?」
ふと、大通りとは反対、路地の奥の方に視線がいった。なぜだかは分からなかった。
僕がそちらに視線を向けると、「ソレ」はビクッと身体を震わせた。
「……子ども?」
「っ……!」
静かに近づくと、そこには、ボロボロの服を着た小さな子どもが座り込んでいた。髪も乱れ、裸足だった。
(こんな所になんで……)
「……っ」
僕を視認したその子は、明らかに僕を見て警戒している……いや、怯えている様子だった。僕は、ため息をつき、その子の前に屈む。
「こんな所で何してるの?親は?」
「………」
首を振る。
「お家は?分かる?早く帰らないと……」
「っ!!」
「…!」
突然、その子が目を見開き、怯えだした。そして、その子は呟く。
「イヤだ……お家は……イヤだ……!」
「………」
「痛いのは……イヤだ……ごめんなさいごめんなさい!」
(あぁ……そうか、この子は……)
そう思った僕は、優しく微笑んだ。そして、その子に手を差し出す。
「……えっ?」
泣きながら、キョトンとした表情を浮かべる。僕は、優しく言う。
「一緒に逃げよう。誰も来ない……遠くに」
「…!」
僕がそう言うと、その子は、戸惑いながらも僕の手を取った。
「君の名前は?」
「……スイ」
「スイか。僕はヒヨリ。よろしくね」
「……うん!」
その子……スイは、どこか不安な様子を含みながらもニコッと笑ってくれた。僕は、スイの手を握って手を引く。
「それじゃ行こうか!」
────僕と一緒に、遠くへ。
9/23/2025, 1:06:43 PM