あなたは誰
満月の夜に、
私は見てしまったのです。
貴方が私ではない人と、
愛を囁き合う姿を。
貴方は誰、ですか?
私の知る貴方は、
私だけを愛していて、
他の誰をも愛さない筈。
貴方は誰、ですか?
私の愛した貴方は、
私を愛した貴方は、
何処へ消えてしまったのですか?
漆黒に染まる心が、
全てを壊せ…と、囁きます。
変わってしまった貴方も。
貴方を奪った人も。
見捨てられた私さえも。
気が付けば、
貴方は静かに横たわり、
その身には、
真紅の薔薇が、
咲き乱れていました。
『君を家族の様に愛していた。』
貴方の最期の言葉が、
耳から離れてくれません。
だから、貴方に口付けます。
そっと頬を撫でながら。
もう直ぐ私も、
貴方の傍に行きますから。
寂しくないでしょう。
―あんな男など居なくても。
遠くに横たわる、
憎き人間だったものは、
見ないことにしましょう。
貴方の私への愛が、
友愛であったことは、
知らないことにしましょう。
あんな男は、
初めから居なかったのです。
貴方が愛していたのは、
私…だけなのです。
そう耳打ちながら、
罪の赤に濡れた銀の刃を、
この胸に沈めます。
貴方は永遠に私だけのもの。
私は永遠に貴方だけのもの。
―この愛の誓いとして。
2/19/2025, 7:17:56 PM