きのう、山登りに行っていたパパから、ベルのかたちのストラップをおみやげにもらった。ゆらすと、リィィンリィィンと大きな音がなる。パパは『くまよけのすず』って言ってた。くまさんはこわがりだから、この音がなっていると、よってこないらしい。わたしが、「かわいいくまさんなら、よってきてもいいのにな」って言ったら、パパは「本物のくまさんは強くて怖い生き物だから、出遭わない方がいいんだぞ」って言ってた。つよいのにこわがりだなんて、ふしぎだなって、わたしは思った。つよくなれば、こわいものなんてなくなるんじゃないのかなあ?
わたしが首をひねっていたらパパが「ま、とにかく、これは怖いものからお前を守ってくれる物なんだよ。身近なところに付けてくれたら嬉しいな」って言った。
『身近なところ』……お気にいりのお出かけ用バッグとか、この前買ってもらったスマホのストラップとか、いろいろ思いついたけど、いっぱいなやんで、わたしはきめた。
学校からの帰り道、リン、リン、と歩くたびに背中の方から音がする。ランドセルにつけた『くまよけのすず』がなる音だ。クラスのいじわるな男の子たちはこの音を「うるせー!」って言ってきたけど、わたしは気にしない。わたしを守る音だって、パパが言ってた。だいじな音なんだもん。
リンリンと音をならしながら、わたしは歩く。音に守られて、ちょっとムテキになったようなきぶんだった。
1/9/2025, 5:34:05 AM