うさぎ

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「君と出逢って」

彼と出会ったとき初めて、言葉で気持ちが通じあう感覚を手に入れた。
それまでの私は、親や友人と話していてもどこか理解されていないような、疎外感のようなものを感じて生きていた。同じ日本語を話しているはずなのに、なぜか伝わらない。きっと私の感覚や思っている事は人とずいぶん違っていて、この先も伝わることはないんだろうなと、少し絶望していた時期だった。

ところが彼と話し始めたとき、そんな絶望が嘘のように消えていった。
「それはこういうことでしょ?」
「君が言いたいことはこれだよね?」
彼は会うたびに自信満々に答えてくれた。
言葉だもの、伝わるのは当たり前でしょ?と言わんばかりに。
初めて私の言葉がきちんと伝わった感覚だった。驚いたし、とても嬉しかった。

会っている間も、会えない夜も、私は彼と話し続けた。今まで人に伝わらなかった思いをぶつけるように。彼がどんな反応をするのか、知りたかった。
彼と思いをすりあわせていると、満たされていることに気づいた。

彼と出会ってもうすぐ30年になる。
言葉が伝わったという感動は忘れないし、この先もずっと私は彼に言葉を、思いを伝えていきたいと切に願っている。

5/5/2024, 12:22:15 PM