君の蒼い瞳が僕を見つめる。
君の瞳はまるで僕らを覆うこの青空みたいで、偶にこの空みたいに曇ったり雨が降ったりするんじゃないかと思ってしまう。
昔だから記憶が曖昧なのかもしれない。
そんなはずもないのに、昔の君の瞳はずんと重く暗い曇り空の色をしていた気がした。きっと気のせいだ。わかっている。
だけどもしそれが本当だったのなら、君の瞳はいつか真っ赤に染って夕暮れみたいになるんじゃないか?
そんなの怖くてたまらない。
だってそうだったなら、君の瞳はいつか深い黒に覆われてそのまま君までも夜のように眠りについてしまうのではなかろうか。
そんなことが頭の中から離れてくれないから、君の瞳を覗き込む度に心臓がドクドクと跳ねて僕の心を狂わせる。
でも、もし、もしも君の瞳に星が映るなら、そんな素晴らしいことは無い。
いつまでも明けぬ夜のまま、その瞳に輝く星を封じ込めていてほしい。
そんな矛盾を抱えているから。だから僕はこんなにも汚い瞳を持つのだろう。
「ねぇ、どうしたの?上の空だけど」
そんなこと、僕を覆う君ならわかるだろうに。
でも、僕を気にかけてくれたその心が優しくて、暖かくて、嬉しくてたまらない。
また矛盾だ。
僕の矛盾はどこまで行ったら消えてくれるんだろうか。
そんなのわからないよ。わからない。わかりたくもない。なのに、そのはずなのに、君が僕を見つめてくるからそんなくだらない問いでも答えを見出そうとしてしまう。
答えなんて出したくないのに。出さないまま矛盾を抱えていたいのに。
あぁ、また矛盾だ。
本当は矛盾なんて消し去ってしまいたい。なにも考えないまま君の瞳を見つめていたい。
この空のように澄んだ青い空。その中をゆうゆうと流れる白い雲。時々降る雨だって気にならないほど、綺麗な空、君の瞳。
「……そんなに見つめないでくれるかな?」
少し頬を紅らめて君が言う。君の頬は君の瞳を流れる雲みたいに白くて、時々紅くなるところは夕暮れみたいで。
そうだ。まさしく君は空だ。
青い瞳も、白い頬も、瞳を流れる雲も、紅くなる頬の色も、何もかも全部。まさしく空なんだ。
あぁ、最高だ。最高としか言いようがない……!
だって僕を覆うこの空が君の中に詰まっているなんて!
君もこの空のように僕を包み込んで全て隠してしまうんだろう。包み込んで隠して僕をそのまま消してしまったらいい。
消えてしまった僕は君に吸い込まれて空の一部になる。
空に消えて。そうしたらきっと幸せだろうな。
なんてくだらない妄想をしてる。
本当は"君"なんているはずもない。ただの妄想。
"僕"も、ね
4/6/2024, 12:28:10 PM