「終わらせないで!!」
私は、倒れている者に駆け寄って
必死に 訴える様に叫んだ。
泣きじゃくり 冷たく見下ろす瞳に
慈悲を請うた。
私が 今背に庇っている者に
侮蔑の視線を向け
腕を振り上げた状態から
動かず
私に 向かって口を開いた。
「ならぬ 其奴は、罪を犯した。
罰せねばならぬ!!」
「罪...罪とは、何ですか...」
私は、キッと視線をきつく結び
侮蔑の視線から 彼の者を
守る。
「其方を誑かした よって死を
もって償って貰う」
「なっ!!」
私は、その言葉に 驚愕し 目を
見開いた。
「何故ですか?神様 私達は、
愛し合って居ただけです...
それが 何故罪になるのですか?」
「ならぬ 天使と悪魔が 交わるなど
あっては、ならぬ!」
その言葉に私は、失望した。
裏切られた気分だった。
神様は、常日頃 等しく人を愛せよと
私達に説いていた。
人と悪魔それだけの違いで
差別し 刃を向け 殺そうと
する神にどちらが 悪魔か教えてやりたい
私は、はっきりと告げた。
「この者の命を終わらすと 言うのなら
私の命も終わらせて下さい。」
これには、神様だけでなく
後ろに 庇われていた
悪魔も声を上げた。
「ばっ 馬鹿 何言って!」
これには、神様も一瞬怯んだ。
「じ 自分が何を言っているのか
分かっているのか!!
天使が血を流す事は、堕天する事を
意味する。
悪魔とも天使とも違う輪廻の輪の中にも
入らず 一人孤独を味わう事になるぞ」
「構いません!」
「駄目だ!!」
悪魔が 手を伸ばして
天使を 引き寄せる。
「馬鹿な事をするな!!
お前との事は、一時の迷いだ
何の情も無い」
「嘘...じゃあ何で泣いているの?」
天使は、悪魔の頬に そっと手を
伸ばす。
その雫が指先に 触れる。
「愛しているわ...」
天使は、呟き ....
自らの手で 自分の心臓を鷲摑み
胸に穴を開けた。
鮮血が飛び散った。
「わあああああああぁーっ」
慟哭が 谺し 響いた。
「愚かな....」
神は、冷淡に 天使を見下ろし
悪魔に刀を向ける。
悪魔は、最後の力を振り絞り
黒い翼を広げ 天使の体を抱え
神様の 祭壇を飛び降りた。
天使の体を抱えた悪魔は、神様達の
包囲網を潜り抜け姿を消した。
その後いくら探しても行方は、
分からなかった。
数年後...
一人の青年が白い丘に立っていた。
灰色の翼を携えて...
その 傍らには、黒い翼を携えた
女性が立っていた。
「馬鹿ね.... 悪魔が更生するなんて...
天使の堕天と一緒じゃない....」
「先に馬鹿な事をしたのは、どっちだよ!
大変だったんだぞ!!
善行を積むなんてやった事ないから
最初の数年は、苦労したし...」
「ふふっ お疲れ様」
二人は、お互いの手を絡ませ
しっかりと繋ぐ
もう離れない様に
二人の時間を誰にも邪魔され無い様に
終わらせ無い為に......
11/29/2023, 12:19:10 AM