上を向いて歩こう
涙が溢れないように
とある有名な曲の歌詞を
口ずさみながら歩く河川敷
今は午後10時頃
人気なのない道を
涙を流しながら歩く
…ひとり……
一世一代の大勝負
給与の半年分の値段を指輪にかけ
神社や星に願いをかけ
告白のマナーやデートコースを調べ
好きな人に告白をした。
結果は駄目だったが…
「ど、どうして!?」
「だって、貧乏そうだもん」
「…っ!?」
貧乏そう…
20歳で手取り20万ちょっと
確かに上を見れば端金だろうさ
だが、他の同年代に比べたら平均以上だぞ
貧乏そうって事は給与じゃなくて
服装とかかな…
結構頑張って買った服なんだけど
彼女には、そう見えたんだろうな
はぁ…
こんな思いをするくらいなら
恋なんてしなければ良かった
どうせ、俺に恋なんて合わないんだろうな
川岸に腰掛け下を向いていたら
後ろから声をかけられた
「すみません?どうかされましたか?」
あぁ、警察の方かな…
今ひとりにして欲しんだけどな
そう思って振り返ったらそこには
「あれ?橋本 先輩?」
そこには大学の頃の後輩の宮沢が立っていた
「みや…ざわ?」
「そうです!どうしたんですか?こんな夜中にこんな所で」
俺は話したくないと思いながらも
話したら楽になるかも、と一縷の考えで
これまでの経緯を話した。
「そう、だったんですね
でも、それで良かったと思いますよ」
「どうして…そう思うのかな?」
「だってその人は先輩自身じゃなくて
お金しか見てなかった、って事でしょ?
そんな人とこれかも付き合う必要無いと思います!
普通だったら、こんなに優しくてカッコよくて素敵な人手放さないですもん
私だったら…」
俺の目を見ながら手を握り
「ずっとこの手を離さないです」
「…っ!?」
そう言って立ち上がった宮沢は笑いながら振り返りこう言った
「今日は月が綺麗ですね!それじゃ、先輩また会いましょ!」
なんだろう
地の底まで落ち込んでいた気持ちが
持ち上げられて今は跳ね上がっている。
「いやいや!勘違いするなっ!
これは唯の蜘蛛の糸みたいなものだ!」
はぁ、でも月が綺麗ですね…か
確かにそうだな
満月輝く空を見上げながら俺は帰路に着いた
悲しみは 星のかげに
悲しみは 月のかげに
「お月さん、恋をしないって言ったな
ありゃ嘘だ!また新しい恋を所望する!
よろしく頼んまぁ!」
気持ちのブレが大きすぎて
変なテンションの俺は
…月に願う
新しい恋を
5/26/2024, 10:35:42 AM