白糸馨月

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お題『星空』

「うわぁ、きれぇい」

 一面の星空の中で彼女が両手を広げている。暗い空には星々がきらめいていて、丘の上に上がった俺もそれに圧倒された。
 彼女はくるくる走り回った後、丘の上で寝転がる。

「ねぇ、こうやると視界が星でいっぱいになるよ!」
「へぇ」

 俺も彼女の隣に寝転がると、視界いっぱいに広がるきらめく星々に「ほんとだ」とこぼす。

「でしょ! あっ、あれはねぇ夏の大三角形といって、あそこにあるのがアルタイルで、こっちにあるのがベガ。それでデネブを繋げて大三角形に……」

 俺はポケットに入れたリモコンのボタンを押した。途端に星空は一種にして消え、彼女もいなくなった。残っているのはうまいことでこぼこさせた山道を再現した広く白い部屋である。
 モテない俺は、モテるためのコミュニケーションを頑張るより仕事仲間と一緒に山道を再現したり、星空と『理想の彼女』のプロジェクションマッピングを作り上げた。
 理想の彼女の会話や行動パターンはAIに教育させている。

「可愛げは近づけたけど、解説しだすとプラネタリウムになってしまうしな。だけど、バカすぎるのもよくないし……」

 俺は寝転がりながら、考えをぶつぶつつぶやき始めた。

7/6/2024, 5:23:15 AM