百貨店でマカロンを買う。
実はちょっと前に何を渡すかを考えていたが、
どうやらマカロンは特別な人に送るらしい。
紙袋を片手に外に出る。
ちょっと前までは凍えそうなほどの寒さだったのに、
今日は風が心地良いと感じられる。
僕の体をやんわりと締め付ける制服が、
風を真っ向から受け止める。
少しぼんやりしていたが、今日の本来の目的を
思い出す。
そうだ今日は、三月十四日だ。
少し興奮気味に自転車のペダルを踏み締める。
正門の前、静かにあの子が部活から帰るのを待った。
約束の時間を10分遅れで、あの子は、
小走りで駆け寄って来る。
慣れない口調でどうぞと“それ”を渡した。
一瞬のありがとうございますの後、
紙袋ごと渡したのが悪かったのか、
その渡し方不思議ですねとあの子は言った。
あっ、
これだ、またこれだ。
そうこの沈黙がいつも嫌いだ。
また空振りだったな。
僕は思った。
今までありがとう、君は“トクベツ”な人だったよ。
3/14/2025, 11:07:31 AM