(※GL表現あり)
気味の悪い手だと言われたことがある。
雪のように真っ白で冷たくて、骨張っているから。
だからいつも制服の袖で覆って、人を不快にさせるこの手が見えないように隠してきたけれど。
「ゆきちゃーん」
夏香はにこにこ笑って手を差し伸べてくる。こちらも手を差し出すように求めてくる。
「ひゃーつめた! こう暑い日は、やっば雪ちゃんの手に限るわあ」
「人を保冷剤扱いするな」
「むしろドライアイス?」
「もっと嫌」
同じ生き物とは思えないほど、彼女の手はいつも温かくて、油断すると心までとろけそうになる。
すると今度は、私の手に頬ずりして「きもち〜」と笑う。
彼女の汗はシトラスの香りがする。道を踏み外してしまいそうで、私は彼女から目をそらす。
「ほら、もう良いでしょ」
「雪ちゃんの手ってさあ」
夏香は私の人差し指をつまんで、
「美味しそうだよね。砂糖菓子みたいで」
人の気も知らないで。
「食べてみたら」
「えっ」
「そんなに言うなら、食べてみなさいよ」
我ながら氷のように冷たい声。
気がつけば彼女の口元に指を差し出していた。なんてことを。変なやつだと嫌われる。でももう、後にも引けなくなってしまって。
「いいの?」
熱を帯びた声。初めて聞いた声色。
赤い唇が、私の人差し指をとらえる。
「じ、冗談だって……」
彼女の舌は熱く、思わず手を引こうとするも、彼女は私の手を離さない。
駄目だ。離して。このままだと私までとけてしまうから。
1/7/2024, 10:28:57 PM