《とりとめもない話》
「ねぇ、世界にはたくさんの人がいるんですって。その『たくさん』っていうのはね、数だけじゃなくって、今いる場所とか、今いる時間とか、考え方とか、気持ちとか……そういう色んなものが違うのよ」
——そうなんだ
「それとね、星っていうのは実は、ずっとずっと前の光なのよ。星はとっても遠くにあるの。どれだけ手を伸ばしたって届かないくらい。だからね、たくさんたくさん時間をかけて私たちに光を、星を見せてくれるんですって」
——綺麗だね
「そうそう、なにかものを手に入れるためには、お金が必要なの。すっごく大切なことなんだから、忘れちゃダメよ? なんでも、ほしいと思ってもお金がないと手に入らないのよ」
——大変だ
「ああ、忘れていたわ。今日はこれを教えてあげに来たの! 人ってね、すぐ忘れちゃうのよ。なんでも。一時間も経てば、覚えたことの半分くらいは忘れちゃうらしいの。大変よね。でもね、覚えてすぐなら大丈夫。ずっとずっと、覚えたことだけを考え続ければ忘れないのよ、すごいでしょう」
——そうだね 凄い
「人が誰かを忘れるときは、音が一番最初なの。だから、声を忘れちゃうのね。その後で、見た目を忘れるんですって! 忘れちゃったら、すてきな笑顔を思い出せないわよね。それから、思い出を忘れちゃうんですって。悲しいわよね、とっても 」
——うん とても悲しいことだね
「……ねぇ、あのね、わからないことがあるの」
——なぁに?
「今がとっても幸せなのに、胸が苦しいの。あなたといるからかしら」
——……そうなんだ
「あなたはこんなにも、笑顔のままなのにね。一緒じゃなきゃ寂しいわよね」
——一緒だけどなぁ 特に……
壊れてるとことか
体が壊れてるのと 心が壊れてるの
違うようで 似てるね
ああ とっても 似てる ただ
一番の違いは これかな
「なんにも話してくれないと、こんな真っ暗中じゃ、あなたがいるかどうかわからないって、前も言ったでしょう。ねぇ、ちょっと! なにか言ってちょうだい」
—— 君には もっとずっと 生きていてほしいかな
……そう 言えたらよかったのに
「そうだわ、明日の話をしてあげる!」
——
……
たくさん
教えてくれて
ありがとう
好きだったよ
なんて、全部冗談さ。
それで、続きを教えてくれる?
12/17/2023, 12:02:46 PM