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 昔、貴女が幼かった頃、ご家族で海に行ったことがありました。貝殻に耳を当てた貴女は、波の音がする、と不思議そうに、けれどきらきらと輝く目で母君に言いました。貴女の母君は、そうだね、不思議だね、と返し、貴女を慈愛に満ちた目で見つめていました。

 俺の中にある、ただそれだけの記憶です。
 それ以上、何が起きた訳でもありません。
 けれど俺は、今の貴女の母君がどれだけ貴女を愛しているか、改めて分かった気がしたのです。

9/5/2024, 2:04:48 PM