喜村

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 あー、身体中がいてぇ……
 俺は、狭い視界で空を見ていた。狭い視界、というのは、ヘルメットを被っているからである。
 さっき、カーブしようとしたら、その対向車側に大型トラックがいて、おもいっきりぶち当たって、ガードレールを飛び越えて、この土手の上に着地、というより、落下した。
 身体が全く動かない。足首少し、指先少し動かすだけで、どこかしら痛む。
 頭を動かしちゃいけない気がする。俺の直感がそう言っている。
 空を見上げているこの体勢以外、何もできない。
 あー、俺しぬのかな
 頭に浮かんだことはこれだった。
 うーん、死ぬ前にやりたいこと、たくさんあったんだけどな。ありがとうとかごめんとか好きとか、言いたいことたくさんあったんだけどなぁ。
 心に浮かんだことは、身近な人への思いだった。
 まぁ、対向車側のトラックの人が通報するだろうから、俺のことも気付くだろう。それにしても、痛い、重い……。
 俺は、ゆっくり瞼を閉じた。見上げていた空を自分で消した。


【空を見上げて心に浮かんだこと】

7/16/2023, 11:05:54 AM