「…もしもし、どうした?」
携帯に見慣れない文字がならんで着信を知らせる。
休みを挟んで会えないのが寂しいなんて言われてつい連絡先を教えてしまった。
だらだらとたわいも無い話をしたり、こうして時々電話をしたりして俺もなんやかんやいいつつその時間を楽しんでいる。
「今日は月がとっても綺麗ですよ、先生もみえますか?」
そう言われて、慌ててベランダへと向かった。
窓を開けて空を見上げれば眩い月が輝いている。
綺麗にかけていて今日は三日月だろうか。
「うん、雲ひとつない月だねぇ」
「じゃあ私が見てる月とおなじですねっ、」
突然そんなことを言う貴方がおかしくて思わず笑った。
だって、月は1つしかないんだから、貴方が見てる月と同じにきまってるじゃないの。
「ねえ貴方、月はひとつしかないよ」
「え、ぁ……たしかにっ、」
そんな子供らしいところも可愛いなぁって思う俺は相当毒されているみたいだ。
へへ、なんてはにかんだような笑い声が聞こえて電話する度に顔を見て話したいな、なんて考えてしまってる。
「先生、起こしちゃいましたか?」
「ううん、読書してただけよ。貴方は?」
「……先生のこと考えてたら声、聞きたくなって…、思わず電話を……」
語尾がどんどん小さくなって最後は消えちゃいそうなほどか細くなった声。
きっと照れてるんだろうな、なんて想像しただけで口角が上がって頬が緩むのが自分でもわかる。
「ふふ、明日も学校だし早く寝なくちゃダメよ?」
「はぁい……おやすみなさいせんせぇ、」
「うん、おやすみ、」
ぷつん、ときれた電話にちょっぴり寂しくなった。
また空の上の三日月を眺める。
明日もあの子にあえますように、とそっと手を合わせた
2024.1.9『三日月』
1/9/2024, 11:38:23 AM