今日は生憎の空模様。私は、サーサーと降り注ぐ雨を学校の屋根の下から見ていた。
「あー!傘忘れてきたんだけど……」
私の隣で君が叫ぶ。
「俺、雨って服が濡れるから嫌なんだよなぁ……なぁ、お前もそう思わん?」
君にそう尋ねられた私は、クスリと笑って首を横に振った。
「雨、私は好きだよ」
だって昔、君が「雨が好きだ」って言ってたから。
「かっこいいレインコートも着れるし、かっこいい傘もさせるし、雨の時にしか楽しめないこともあるでしょ?」
昔の君の受け売りを、今の君に伝える私。でも、君は不思議そうに首を傾げるだけだった。
「そうか?……てか、かっこいい?お前、かっこいいもの好きだったっけ?」
ふふっ、やっぱり覚えてないみたい。
「好きな人の受け売りだよ」
「すっ、好きな人!?だ、誰誰誰!?」
「ふふっ、まだ内緒!」
私は明るく笑うと、雨の中に飛び出した。
「お、おい!濡れちまうぞ!?」
「あはは!だいじょーぶ!ほら、君も!」
私は君の手を引いて、雨の中を走り出した。
「このまま走って、一番乗りで虹を見よう!昔みたいにさ!」
「に、虹ぃ?……たく、しょうがねーな」
仕方なさそうに笑う君が可愛くて、思わず笑みがこぼれる。
今日も、明日も、その先も……こうして、手を繋いで走れますように。一番乗りの虹を、一緒に見られますように。そう願いながら、私はきらめく雨の中を走った。
きっと虹は、すぐそこだ。
【空模様】
8/19/2023, 11:46:53 PM