初めて日本酒を飲んだはずなのに、どこかで感じたことのある感覚に襲われたが、それがなにか、二杯目を飲んで思い出した。〝アルコール消毒液をたっぷりつけた後の手の匂い〟だ。
一言で言えば不味かった。思っていたような味がしない。苦いとか辛いもあまりない。
僕が顔をしかめていると、父は隣で同じ日本酒を口に運びながら笑っていた。
「美味くないか?」
「いや、全然。消毒液じゃん」
「当たり前だろ。酒なんだから」
まあ、そうだけど。
「まだまだ子供舌だな」
そう言って父は「もう一杯」と日本酒をお猪口に注いだ。
【20歳】フィクション作品 #5
1/10/2024, 10:31:15 AM