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細く長い長い農道を抜けると、山の麓に竹林が見えてくる。そこに頂へ繋がる階段があるから、一段一段数えながら登って。途中で何があっても数えるのをやめちゃいけない。何段かわからなくなったら、四十九段から数え始めるんだよ。決して振り返ったり、走り出したりしないこと。丁寧に、確実に、登り続ける。その先が私達の合流地点だよ。

星が綺麗だな、なんて呑気な事を考えながら農道を歩いた。田舎の夜は静かなようで、実は結構五月蝿い。
蛙が一斉に鳴く。遠くでホーホーというフクロウの鳴き声が聞こえた。
「二十三、二十四、二十五……」
なんとか三十段まで来たが、いよいよ疲れがピークに達しそうだ。
「あと何段あるんだよ……」
ぶつぶつと文句を言いながらも登り続ける。数えるのをやめたら何が起こるっていうんだ?
「………。」何かが聞こえた気がした。足は絶えず動かしながら、耳をすませる。
「………!」祭囃子だ。何処からか、祭囃子が聞こえる。
何処かで祭りがあるのか?わからないが、少しずつ音が近付いてくるように感じた。
「……しまった」
段数がわからなくなってしまった。一瞬、足を止める。何段から数え始めればいいんだっけ。確か……。

―ドンッ。
背後で鳴った太鼓の音と同時に、僕は意識を手放した。

6/29/2024, 2:40:09 AM