【未来】
久々に大きな仕事を終えた僕はその足でとある雑居ビルの屋上に向かった。
ここには、ここの町には誰も住んでない。
色々あって今ではゴーストタウン化した「忘れられた町」の1つ。
人が居ないから静かで落ち着く、僕のちょっとしたお気に入りスポットだ。
屋上の縁に座り、足をブラブラさせながら途中のコンビニで買った缶コーヒーを飲む。
コレがまた最高なんだ。
夜風は気持ち良いし、何よりここから見える星空がめちゃくちゃ綺麗で癒される。
…1時間くらい経っただろうか。
空になった缶コーヒーを遠くへ投げると僕はゆっくり立ち上がり、ロケットペンダントを開いた。
中には向日葵を抱えて笑っている1人の女性の姿。
…僕がこの世で唯一愛した人だ。
「今…会いに行くからね」
今日は特別な日。
この「忘れられた町」で生まれ育った幼馴染の命日。
僕は忘れない。
彼女と過ごした日々を。この町が「忘れられた町」になってしまったあの災害を。
ロケットペンダントをギュッと強く握り締めて一歩踏み出す。
過去に囚われて進まなくなった僕の時計の歯車がやっと動き出した。
…未来へ、進んだのだ。
6/18/2024, 5:49:30 AM