君がついに旅立ったと、手紙がありました。
大々的に、なんて昔は言ってましたけど、
随分小ぢんまりしそうな気配がするのは
気のせいでしょうか。
親も子も片割れも置いていくなんて、
薄情な君らしいなぁと思います。
結局約束を破られてしまったけど、
此方は守り続けるつもりなのでね、
後で悔しがる君の顔が目に浮かびます。
……はは、ざまみろ。
精々一人で天国探索しててください。
それじゃあ、またいつか。
<泣かないよ>
「何で大概の水場には、必ず鏡が置かれるんでしょうね」
赤い口紅をポーチに仕舞いながら彼女は言う。
「化粧室とか洗面所はまだ分かるのよ。お手洗いやお風呂場やキッチンにも置かれる理由が分からないの」
まして、と小さく指差された先。
「こんな大きな合わせ鏡にするなんて」
広く見せるためじゃないの、と問えば。
「化粧直しなんて、寧ろ誰にも見えないようにしたくないかしら」
それもまあ一理、と鏡を見やる。
化粧して尚青白い肌の彼女は、
鏡の向こうで赤い唇を吊り上げ嗤っていた。
<怖がり>
3/18/2024, 9:04:49 AM