John Doe(短編小説)

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オーバードーズ


自分の娘が大量の市販の風邪薬を隠し持っているのを知った上で、娘が風邪だと本気で思う親がいるなら、その親はそうとうな阿保だ。
だから、父さんと母さんが私の精神状態を危惧して、クリニックに連れて行くというのは、まったくもって不思議な話ではない。

両親は、私が風邪薬を大量に飲むことによって、自ら命を絶とうとしていると思ったらしい。
いわゆる、オーバードーズってやつだ。
でも、人間の身体はそんなに脆くはないから、市販の風邪薬なんかじゃ死ねない。
これは、単なる自己逃避だ。
それに、みんなやっている。

ドクターから、いろいろ説教されたり、今後私の身体に起こり得る症状などを脅すように説明されると、抗鬱薬を処方されて、診察は終わった。
私が鬱病かどうかは聞かされなかったから、分からないけど、おとなしく薬を飲むことにした。
この薬を飲んだらパアッと明るくなるものかと思っていたけど、そんなことはなかった。

両親は私がオーバードーズをしていたのが余程ショックだったのだろう。
申し訳なく思うけど、薬を大量に飲むことで得るあの多幸感は他では味わえないんだから、ハマってしまうのも仕方ない。
だけど、私はもう絶対にオーバードーズをしない。
絶対にやるもんか。

私は処方された抗鬱薬を引き出しにしまった。色とりどりのカプセルやら錠剤やらに、新しく抗鬱薬が加わった。
もちろん、両親は知らない。
だって引き出しには鍵をつけているから。
私が着々と計画を進めていることなんて、知りもしないで、リビングでバラエティー番組を見ていた。

9/3/2023, 2:04:47 PM