おや。半端なく暴れましたね。
西の青紫の夕方の空に、最初は白い煙が上がっていた。
火事のような光景を見上げながら青年は残りの缶ビールをぐっと煽った。
周囲の人間のざわめきがどんどん増えていく。スマホで撮ったり電話したり、解説動画を作っていたり…。自分の時代では考えられない光景だ。
化学工場とガソリン車が駐車場にもあったし、やがて真っ黒な黒煙と、火球がここからも目視できた。
続いて体を揺らす爆風。
やじ馬の女たちの恐怖の悲鳴が続く。
少し経って、ホテルの窓から少女は帰ってきた。
帰ってきた彼女は煤だらけで埃だらけ。
髪もチリチリだ。早くお風呂に入れてやらなきゃ。誰にも見られていないといいけど…なんて心配は不要だ。彼女はそんなヘマはしない。
薄汚れた服を1枚、また1枚と脱がしてやる。彼女はされるがままだ。
「…なんで、お前は居てくれるんだ…」
「愚問ですね」
「あいつら、私のこと…頭がおかしいとか変とか言うんだ…」
だから燃やした。
「人間なんか、大嫌いだ…。全部潰してやる、全部…」
たったそれだけで。殺人鬼はもうこうなると手が付けられない。
下着だけになった彼女の肩を少し寄せると、向こうから飛び込んできた。煤と油の匂いがする。それから血の匂いも。
怒り狂って毛を逆毛立てている彼女にゾクゾクするし、帰ってきて自分の存在に戸惑う彼女がたまらない。
再確認する。
「僕が居ますよ。僕はあなたのものだ」
肋骨の浮き出た細い体に肩。子どもとは思えない柔らかな尻。細く白い首筋は、いくつもの裂傷のあとがあった。
「忘れないで」
「ん」
「僕が居ます」
分かってる。と、震える腕が顔に巻きついてくる。焼かれた臭いの中に、甘い花のような香りがする。
薄布の彼女を抱きしめても、服のなかには手を入れない。薄い胸と、女性らしい滑らかな脚、細い腰を感じる。
泣きそうだけど泣かない彼女を、ただ羽根のように抱く。
「1つだけ」
4/3/2026, 10:19:39 PM