どこへ行こう
君の名を呼ぶたびに、
声が闇へ溶けてゆく。
風も答えず、光も差さぬこの場所で、
私は独り、君を探している。
どこへ行こう。
この胸の痛みが導くなら、
その先は、君の温もりの残る、
あの夜の終わりだろうか。
あの日。
君が差し出してくれた手が、
私は、素直に嬉しかった。
ただ、それだけだった。
君が私に縋るとき、
私はただ、
腕を広げるしかなかった。
君の絶望も、哀しみも、
私の中へ沈めてしまえばいい。
…そう思った。
君の刃が胸に届いたとき、
私は、何故か怖くなかった。
それは、痛みではなく、
漸く知った愛の形だったから。
君の凶刃は、
優しさの裏返しであり、
震える君の唇は、
私を壊すためではなく、
自らを赦せなかった証だった。
君が望んだ「永遠」は、
確かにこの身に刻まれた。
だが、それは、
君を縛る鎖であってはならない。
だから、私は独り君を待つ。
この静謐の果て、
時の波に溺れぬように、
君の名を胸に刻んで。
私の魂はまだ、君に触れている。
例え、この世に私がいなくとも。
もしも、この祈りが届くのなら、
君が、その生を終えた時。
どうか、もう一度、
あの日のように、
手を伸ばしてくれ。
独り、明けぬ闇に揺蕩い、
行き先も知らず彷徨いながら。
…ただ、それだけを、
願い続けている。
4/24/2025, 7:50:57 AM