狐コンコン(フィクション小説)

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おまえのひとみがすきだ
おまえのつまさきがすきだ
おまえのあでやかなかみがすきだ
おまえのこころがすきだ
おまえがすきだ
あいしている
おれのものになってくれ


彼は彼女の腕を掴む
それでも彼女は振り払う


どんなに懇願されようと私は頷かないわ
貴方のたくましい腕は好き
貴方のたくましい足は好き
貴方の強い瞳は好き
貴方の並べる言葉は好き
でもそれだけだもの
時が経てば私は貴方なんてどうでもよくなるの


品定めの目がぎょろぎょろと彼を舐めていく


それだっていい
かねだっておまえにすべてやろう
いえだっておまえにすべてやろう
つながりだっておまえにすべてやろう
おれにのこるものはなんだっておまえのもの
すべてはおまえのもの


品定めの目がぎょろぎょろと彼女を舐めていく


きっと私達は老いを受け止めきれないわ
貴方は私を捨てる


彼女の瞳が揺れた


きっとおれたちはうけとめられる
おまえはおれをすてない


彼の瞳は揺るがなかった


ほらやっぱり
貴方は私の欲しい言葉はくれない
本当に欲しい言葉はくれない
騙されてなんかあげないわ


彼女は腕を振り払って足音をぶら下げ離れていく
全てが遠ざかり、残りうるは彼のみ
そして彼もまた、一つの言葉を残して離れていく


おまえがはなれないかぎり
おれがおまえをてばなすわけがないのに
どうしてそれすらわかってくれない

5/14/2026, 5:52:43 AM