rudy

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✳窓から見える景色

田舎の山間部に住む佐藤は、深夜の夜道を車で走っていた。
街灯は少なく、辺りはすっかり真っ暗だ。
今は秋のシーズンというこどで、秋の味覚のキノコ狩りに行っていた。
隣の相席には、袋いっぱいになったキノコを見てほくそ笑む。

どうやって調理をしようか⋯⋯シンプルに焼きキノコや味噌汁は美味い、バター醤油炒めなんかは王道だ。
そんな事を呑気に考えながら走行していると、ふと前方から男女の悲鳴が上がった。

佐藤は、またか⋯⋯と思いつつ、そこにいた男女2人に向かって窓を開けて声をかけてやる。

「おめーら、まーた何やってんだべ!そんな事してっから、幽霊さ怒るだ!」

そう、ここは今流行りの心霊スポットらしい。
そのため他県から若者が後を絶たず、わざわざ田舎の山にやって来るのだ。
そして、突然声をかけられた2人はまたもや悲鳴を上げた。

「「ギャーーーー!出たーーー!」」

なんとも間抜けな声に、佐藤は呆れて言った。

「おめー達の目ん玉は、俺がどんなに写っとるさ?あ?俺はまっこと生きとるわ!」

そうツッコミを入れると、女がガタガタ震えながら佐藤の車の後部座席に指をさす。
そこにはボサボサのカカシが立てかけてあり、気付いた男もヒイッ!と悲鳴を上げる。

「あーー⋯⋯これは、あれさ。畑に刺したやつが古くて取替えてたんだ。大丈夫、ただのカカシだべ」

安心するように言うと、ホッとした表情になる2人。
良かったぁ〜と抱きしめ合う姿に、驚かせたお詫びに
、とっておきの場所を案内しようと声をかけた。

「驚かせて悪かったさ〜お詫びにいいトコ連れてってやるべ!」

「いいトコっすか?もしや新たな心霊スポットなら、もう大丈夫っす!!」

慌てる男に佐藤は、いんやと首を横に振る。

「地元でも知ってるもんがあんまいねぇとこでよ、秋蛍が観れる場所があるだよ。小川に蛍が飛んで、綺麗な場所だべ」

「えっ!この時期に蛍ですか?行きたいです!」

目をキラキラさせた女が行こうよと男を促すと、まあそこなら、と男が頷いた。

「おめーら、車もってるなら俺の車についてこい、車で5分にあるとこさ、安心せぃ」

そして車に乗った2人を確認したあと、先導するように車を走らせていく。
数分でついた先には、蛍が数十匹も舞っていた。

車から降りた2人に、佐藤は窓を開けて聞いた。

「どうさ?綺麗だべ?」

「はい!ありがとうございます!」

「心霊スポットの近くにこんな穴場があるとは、知らなかったっす!」

嬉しそうに言う2人に、うんうんと頷くと、そういえば何か忘れてるような⋯⋯と思いつつも何だったかと思いだそうとする。
2人は少し歩き始めると、暫くして悲鳴が上がった。

「「ヒィッ!!」」

2人が指差し震えている。
その方向には、ボロボロの地蔵が佇んでいた。

「地蔵が!地蔵がっ!!」

「あーーーー!思い出したさ!ここは昔、罪人が首を切られた場所だったべ!安心しんさい、地蔵が守って⋯⋯⋯⋯」

地蔵が守ってると言おうとした時、ドン!と車のボンネットの上にその地蔵の頭だけが落ちてきた。

「「「ギャーーーーーー!!!」」」

3人は叫ぶと、慌ててその場を離れ逃げて行った。

そしてそれ以降、新たな最強心霊スポットとして雑誌に紹介されていたのだった。

9/26/2024, 5:40:58 AM