hashiba

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哀れみからの献身は驕りだ、傲慢だ。かつて友人に言われたことを思い出す。大切でもない人間のために身を砕いている、などと思われていたらしい。それを「あなたらしい」と表したのは彼、今の恋人だった。「こっちは勝手に寝て勝手に治すからお構いなく」体調不良の彼を見舞ったとき、布団に籠ってそんなことを言い出した。「その献身を独占するのは忍びない」くぐもる声はいつも以上に小さく、掠れている。体と一緒に心まで弱ったのだろうか。「仮に誰か他に助けたい人がいたとして」布団越しにぽんぽんと叩いてあやす。「あなたもその人も両方助けるので、遠慮せずにどうぞ」頭があるであろう場所を撫でながらそう告げると、布の山を小刻みに揺らしてしばらく笑い続けていた。


(題:愛があれば何でもできる?)

5/17/2024, 8:02:54 AM