題:見知らぬ街の、見知らぬ貴方
俺は見知らぬ街に着いた。
見知らぬ街に少々不安を覚えるが、好奇心もあった。
夜といっても、街はまだ煌々と輝いている。賑やかな街だ。
「まずは物資の補充をしないと……」
そう、俺は冒険者だ。色んな街や村を巡って旅をしている。
一旦広場に出て、順に店を回ることにした。
「ん、誰だあの人……」
見知らぬ街なのだから誰か分からないのは当然なのだが、妙に気になった。
その人は右目を隠していて、肩出しの裾の長い浅葱色のドレスが映える人だった。
それと、隠していない左目が、星空みたいに綺麗だった。
魔導書店で買ったのか、たくさんの魔導書を持ってた。
自分のやる事を思い出したからその人の前を通り過ぎようとしたら……。
立った拍子に魔導書の重さでグラついたのか、魔導書を地面に落としていた。
慌てて俺も拾うのに加勢する。
「あ、ありがとうございます」
「いえ、こんな事が起こって無視することの方が無理でしょうから」
その人は申し訳なさそうに瞳が揺れていた。
全て拾い終わると、名前を聞かれた。
「リンクです」
「リンクさん、ですね。ありがとうございました、リンクさん」
深々とお辞儀をされ、少し恥ずかしかった。
その人とはその場で別れた。
その後、何ヶ月か街に滞在し、次の街に向かったのだけれど……。
その街にその人が居たってことは、また別のお話。
お題『見知らぬ街』
8/24/2025, 10:50:21 AM