好きだよ:
こういうのは伝えたいと思ったそのときに伝えるのがいいものだと、ふとした瞬間に聞こえてくる。
次に会った時は言おうだとか思っていようものならその“次”が永遠に来ないことなんてざらにあるのだから、と。
痛く共感する。言えないまま来ない“次”を待ち続けている言葉はいくらでもある。
だからこそ伝えたい気持ちはなるべく言葉にしたいというのに、なかなかどうして出来やしない場合もある。
突然にかつての思い出が過って腹の底から沸き立つようなこの気持ちだとか、どうしようもなく草臥れてしまって縋るように抱いたあの感情だとか。言いたい時に限って届けたい相手はそこにいない。
現代ならではの手法こそあれど、これだって一筋縄にはいかないのだ。脈絡もなく会話の流れを切れないだとか、向こうからの返答を待たず一方的に送り付けられないだとか。
知ったことかと一蹴してしまえたらどんなに気が楽になるだろう。とはいえこういった暗黙の了解じみたものはそこかしこにあるし、それに倣うことで我が身を守ることができるというもの。
硝子細工を持たされている気分だ。そのくらいがちょうどいいのだろうけれど。
繊細で美しいそれを壊してしまわぬように、しまいこんで埃を被らせぬように、両手で大切に包み込んでは誰かへ差し出す。こんなにも愛おしいことが他にあろうか。
言葉で、態度で、持てる全てで伝えたあと、花束のようになったそれを抱えて笑うあなたの隣にいたいと願うことを、どうかこれからも許してほしい。
4/5/2025, 5:03:05 PM