瀬名柊真

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どうして。どうしてなんだろう。
俺はちゃんとあいつのことを愛していた。愛せていた。正しく、誤らず、危険な衝動は秘めて。
ずっと自由に、幸福にいてほしかった。だからあいつを信じてこの手を離したのに、あっという間に他所へ行く。
外で事故るかもしれない。
誰かに襲われるかもしれない。
他の男と浮気しているかもしれない。
その時、非力な俺にはあいつを守って、俺のもとに留める術はない。
その不安を押し殺して、笑顔で行ってらっしゃいを告げていた。
いくら同棲しているとはいえ、あいつの行動を縛る権利が俺にあるはずもなかった。
第一、俺はあいつに愛していると言ったことがない。言えば、すべてが壊れそうな気がして。好きだ。なら言える。だが、愛しているだけはどうしても駄目だった。
あいつの美しく長い髪に、艶やかな唇。凛とした声に、無防備な寝顔。全てがあいつを手に入れたいと思わさせた。だが、手は出せない。あいつは、俺を信じているからこんなにも無防備なのだ。その信頼を、無垢を壊してはならない。
そして、あいつはとうとう男を連れ込んだ。俺のいない間にする予定だったのだろうが、偶然にも帰ってきてしまった。
あいつは、慌てふためき、その裸身を隠して弁明を始める。
聞きたくない。聞きたくないけれど、聞かなければならない。全てを見なかったことにして水に流さねば。
「だから、ここに連れ込んじゃってごめん!優香、嫌だろうし今度からホテルにするね!」
あいつの言葉に俺は軽く頷いてみせた。

1/14/2026, 11:14:15 AM