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「おーい。おーいって。そこの君だよーこの私を無駄にしてる君!」
「………あ、俺?」
 下校中の電車の中、俺の真正面に立っている女が話しかけてきた。
「そーだよ!君いま何してるの?ゲーム?ってかそれクソゲーじゃん。テスト近いのにそんなのしてていいわけ?」
「いやなんで知ってんの。ゲームはともかく学校事情はわかるわけねえじゃん」
「そりゃあ、私どこにでもいるし」
 非常識にもつり革にぶら下がるその女は、意味深な言葉を吐き捨てた。
「時間っていうのは、一瞬一瞬の積み重ねでできている。人間は愚かだよね。あとになってからあの時の一瞬に、これをしておけばって後悔する。いつもそこにある一瞬を蔑ろにしたのは自分なのに。私はいつでもどこでもいるっていうのにさ」
「……さっきからなんなのお前。一瞬を自分みたいに言って」
「自分だよ。私の名前は刹那。この世のどこにでもいるけれど、誰もが私をいないように扱う。そんな、悲しい存在」
 女は寂しげに笑うと、電車の発車と共に姿を消した。

4/28/2023, 11:07:43 AM