バスクララ

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「なあ、君。縁起の良い初夢といえば何かね?」
 二人しかいない文芸部。一年の集大成に向けての小説を書いているところに先輩がヨガの立ち木のポーズをしながらそう訊いてきた。
 ピンと真っ直ぐ伸びてブレない姿勢がまさに先輩を表している気がして、なんだかなあという気持ちになる。
 そんなことやっている暇があるなら文芸部らしいことをしてほしいけど、今更そんなこと言っても無駄なので素直に言葉を返す。
「一富士二鷹三茄子……ですか?」
「そうだ。そこに四扇五煙草六座頭と続く。
君はそれらが出てくる初夢を見たことがあるかね?」
「ありませんけど」
 私がそう答えると先輩はニヤッと勝ち誇ったような笑みを浮かべて、今度は英雄のポーズⅠをしながらこう言った。
「私は見たことがあるぞ。しかも茄子の夢だ」
「へー」
「もう少し良いリアクションをしてくれても良いのだが?
まあいい。こんな夢を見たんだ。一生懸命茄子の桂むきをして煮物にする夢をな」
「茄子の桂むき……ですか?」
「ああ。前日に茄子は食べてないしどうしてそんな夢を見たのか思い当たることもないのだが、起きた時はハッピーだったぞ。
現実でもやろうとは思ったが、さすがに危なくてやめたな」
「そりゃそうですよ。まあでも、初夢がそれだなんて凄いですね」
「そうだろうそうだろう!
だから富士山と鷹と扇と煙草と座頭の初夢を見てコンプリートしたい! 茄子の夢を見られたのだから他の夢も見られるはずだ!
さあ、君もぜひ応援してくれ」
 いったいどう応援すればと思ったけど先輩のキラキラした屈託の無い笑顔を見て、まあちょっと神さまとかに祈るだったらしてもいいか……と思った。

1/24/2026, 1:25:04 AM