薇桜(引き継ぎ失敗しました💦)

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 ここは、魔力が澄んでいる。噂に聞いていた通り、自身の魔力と融合して、その者が望む幻覚までもが見えてしまうほど清い魔力だ。
「…私は君に会いたかったのかな。」
彼は微笑んだ。それが、彼だからなのか、私自身が見せてる幻覚だからなのかはわからない。
「僕は、君に会いたかったよ。」
彼は私に近づいて、私を抱きしめた。感覚はなく、やっぱり私の幻想なんだと思い知る。
 その瞬間、私の髪は宙になびいた。風はいたずらっ子だ。そんなこと、あのときから知っている。あのときの私を、君はどう思うのかな。
 風のせいで魔力は乱れ、彼の幻覚は消えていた。ここには、あらわになった首の後ろの傷を見る人は誰もいない。だから、少し安心していたし、同時に寂しくもあった。風はいたずらっ子だ、本当に。

1/17/2025, 10:29:29 PM