夏の始まりおばあちゃんの家に行くと風鈴が出ていた、風に揺らされ嫌と思うほど綺麗に響く音が私の耳に突き刺さる。
いつ聞いても癒されてしまう。
私は夏が嫌いだ暑くて虫も多いし、いいことなんてない。
そんな夏だけど綺麗なものがたくさんあるから好き。
矛盾していることなんて知っているけどみんなだいたいそうだ。
なんて、小説の主人公とかでしか言わない言葉を頭の中で考えては消しての繰り返しで扇風機の前で暇を潰す。
高校生にもなって彼氏もいなければ、わざわざ暇を潰す友人もいない。
「あーつまんない」
そんなことを言ってたらおばあちゃんから呼ばれた。
畑の手伝いらしい。
まぁ暇だし、と重い足取りで畑に向かう外は予想通り暑く入道雲がくっきりと青くすんだ空に広がっている。
畑仕事が終わりお婆ちゃんからお小遣いをもらった。
散歩がてら駄菓子屋でもいこーなんて思いながら500円玉にぎりしめ自転車にまたがり坂を下る。
暑い空気も自転車だと涼しく自分を押し出してくれてるみたい。
ふと横を見ると澄んだ空と同じ色の海が果てしなく広がっている。
「綺麗」
自然と自分の口から出た言葉それすらも気づかない。
この景色は私の嫌いで好きな夏でしか見れない。
「“夏の気配がする”」
6/28/2025, 12:42:47 PM