安達 リョウ

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理想のあなた(似た者同士)


向いに座り、ビールを脇にツマミに手をつけている男の顔をじーっと見つめる。

………見た目は良い。確かに。

けど口は悪いし気は利かないし、連絡もマメでなければカノジョであるわたしに対して何の計らいもない。
学生の頃からの旧知の間柄から気づけば恋人へと移り変わったからか、新鮮さは皆無に等しかった。

―――小さい時に描いてた理想とは程遠いような。

はあーぁ、と盛大に溜息を吐くと彼が視線を自分に送る。

「何だよ、食わねーのか?」
「………ちょっと食欲なくて」
「しっかり栄養つけねーと明日の仕事に影響するぞ」
………。こういう時は釘を差すんじゃなくて、心配してほしいのに。

けどダメね、ふとした表情や仕草でどうしたって好きが勝ってしまう。

これが惚れた弱み、なのだろうか。

「なあ、来週の週末空けとけよ」
「? わかってるわよ、いつもデートは週末じゃない」
「………ああ」

………。何だよ、自分の誕生日も忘れてんのか。

いつもはお前の理想には興味のない俺だけど、どうしてだろうな。
たまには理想の恋人を演じて気を引きたい程には、俺はこいつに参っているらしい。

これが惚れた弱み、というやつなのだろうか。


END.

5/20/2024, 2:46:11 PM