うるさい。
頭から鐘の音が離れない。
布団の中でじっと収まるのを待っていたけれど、とうとう我慢が出来なくなって鍵を掴んで外に出た。
何でも良いから気を紛らわせたい、振り払いたい。川沿い、土手を走った。
今は深夜で誰も居ない静寂の中、私の音ばかりが占めている。
足音。荒い息。
鳴り響く鐘の音。
視線は真っ直ぐで、きちんと景色を映しているはずなのに、昨日の光景が目に焼き付いている。
幼馴染の結婚式だった。あの子の横顔。私と目があって笑った顔。「来てくれてありがとう」って、本当に幸せそうで。
私はあの子のことが好きだったのか。分からない。
ただ、この鐘の音を、うるさいなんて思ってしまってごめん。息が苦しくなり、涙が出た。ずっとペースを落とすことなく走っていたから。
涙を雑に腕で拭う、鐘はまだ鳴っている。
だから足は止めない。
/鐘の音
8/6/2023, 12:31:03 AM