──君たちの幸せを願おう。
「なかなか上手く行かないものだな」
水の神が言う。
「そうかい? これでも進展した方だと思うけれど」
風の神が言う。
「まあ最初に比べればなあ」
土の神が言う。
「ちょっと、うちの所の子も頑張ってるんだからね」
植物の神が言う。
四柱の神々が覗き込むのは不思議な水鏡。彼らによく似た容姿の人間たちが、忙しなく動いている。
「何もここまでお前に似なくて良いだろうに」
「何が言いたいわけ」
「植物のが鈍感だってことだろ」
「はは、君を落とすのには苦労したよ」
「え? 最初から落ちてたけど?」
「……」
「あ、固まった。だいじょーぶか、風の。……動かねえな、植物のの天然タラシなとこも似たんじゃね?」
「同感だな」
「水のと土のも全然進まなかったけどね。横で見てる分には明らかに好き合ってるのにさ」
「そっくりそのままお前に返すわ、その言葉」
「……本当にね」
「復活したか」
「はあ……無自覚なのやめて欲しいな」
「何が?」
「こいつに自覚を求める方が無駄だろぉ」
「そうなんだけどねえ」
「だから何が?」
「お前は知らなくて良いことだ」
「気になるんだけど」
「気にするな。……ほら、進展があったようだが」
「え、マジ? おー、良い感じじゃん」
土の神がにんまりと笑みを浮かべる。
「この感じで上手く行くといいけどねえ」
風の神が苦笑する。
「さてな。全ては子供たち次第だ」
水の神が微かに口元を緩める。
「まあ、どうにかなるでしょ」
植物の神が柔らかく眼を細める。
四柱の神々が覗き込むのは不思議な不思議な水鏡。彼らの愛し子たちは、笑ったり泣いたりと忙しい。
四人の人間たちがどんな結末を迎えるのか。
さてさて、それは神々ですらも知らないのである。
(もう一つの物語)
いつもの四人を見守っているかもしれない神様たちのお話。この四柱は一切本編に登場しません。
好みも分かれそうなので、もしもの話、と思っていただければ。
10/29/2024, 11:11:50 AM