ミキミヤ

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姉と姪と私で、川沿いの桜の並木道を歩いて花見をしていたときのこと。
姪のヒナタは風に舞う花びらを自分の手で捕まえようと、繋いだ姉の手を振り切る勢いで、あっちにぴょんぴょん、こっちにぴょんぴょんしていた。
私は2人の前を歩きながら、ゆっくりとした足取りで桜並木を楽しむ。木々を彩る薄紅も、枝から離れた花弁も、どちらも何か心の深いところに訴えかけてくるような風情があった。

「あ!エミねえちゃん、いいなー!」

急に、後ろを歩いていたヒナタが声をあげた。なんだろうと振り返ると、ヒナタは私の背中辺りを指差しているようだった。

「エミねえちゃん、かみに花びらついてる!かわいい!」

どうやら、私の背中辺りの髪の毛に、いつの間にか桜の花びらがくっついていたらしい。

「ね、ね、とっていい?ヒナタそれほしい!」

手を一生懸命私の背中に伸ばしながら言ってくる姪が可愛くてしかたない。私は緩んだ顔で「いいよー」と言いながら、その場に立ち止まり、しゃがんでヒナタに背中を向けようとした。
その時だった。
ぴゅーと風が吹いて、また桜の花びらが舞った。その中の1枚がひらりひらりとやってきて、風のいたずらのように、ヒナタの小さな頭の上に乗った。

「ふふっ」

私と姉が同時に笑った。1人だけ訳の分かっていないヒナタは、きょとんとしている。

「今ね、ヒナタの頭の上に花びらが乗ってるのよ」

姉が言うと、ヒナタは慌てて自分の頭の上を繋がれていない方の手で探ろうとした。

「ヒナタ、待って」

その様子では間違って花びらを払い落としてしまいそうだったので、私はその手を掴んで、そっと頭の上の花びらに誘導してあげた。指に触れた花びらに気づいたヒナタは、それを掴んで自分の目の前に持ってきた。

「わ、花びらだー!花びらゲットできたー!」

ヒナタはその場でぴょんぴょん跳ねて喜んだ。ヒナタと繋いだままの姉の手は、その動きに合わせて激しく上下している。それを嫌がることもなく、姉は微笑んでいた。私もその2人の姿を見て、あたたかい気持ちになった。

1/18/2025, 8:51:03 AM