プレゼント
「お〜メリクリ!がんばれよ受験生!」
二歳年上の晶はさも懐かしいとでも言いたげににかっと笑って僕と友人にキットカットの大袋を渡した。
今年のプレゼントはキットカットか、と11月の連休ぶりに会う彼の顔を見て笑う。
数年目の淡い片思いは穏やかだ。わざわざキットカットを、僕の友人の分まで用意してくれたことが嬉しかった。
「怜、このまま帰んの?どうせ隣だし俺ももう帰るんだけど。」
「あ〜じゃあ怜また月曜、メリクリ〜。」
「あ、うん、気をつけて、はぴホリデー。」
僕の片思いを知る友人はキットカットを抱えてさっさと手を振り去って行った。
「…おかえり大学生。」
「ただいま高校生〜、勉強どうよ。」
「とにかく応用問題がふあん…。」
「あ〜ね、分かるわ。…あ、はい、これ。大学生サンタから。」
二人、駅から家を目指して歩く。ぽつぽつと話していると晶が徐に肩にかけた鞄からフライトキャップを取り出して僕の頭に被せた。
「うわ、すごい、もふもふ…あったか。…え、くれんの?」
「うん、カーキのコーデュロイに犬みたいなもふもふ見たらお前の赤毛に似合いそうだなって思って。似合う似合う。」
立ち止まると晶は僕を振り返り、雑に被されてはみ出た前髪を分けるように撫でた。真冬の空の下、鼻先まで熱が巡る。
…ずるい。穏やかに済ませたい片思いなのに。
「…ありがとう晶。」
「どいたしまして、受験生の大事な脳みそあったかくして。」
並んで歩くだけで僕にとってはプレゼントなのに、腕にはキットカット、頭にはもこもこのフライトキャップだ。
なんだか堪らなく幸せで、僕は込み上げる笑みを隠すのを諦めた。
「…ふふふふ…。」
「おお、喜んでる喜んでる。」
「ぼく何も用意してない。」
「じゃあ合格で返して。」
「プレッシャーえぐ…。」
「あはは。」
12/23/2023, 12:53:52 PM