Open App

既読がつかないメッセージ

『別れたい』
その文字だけが液晶にひとりぼっちで浮かんでいる。既読のマークは横で小さくだが主張していた。
3時間前、何度も悩んで決めた貴方へのメッセージ。理由も綴ろうかと思ったけど、長くなりそうだから控えた。
ずっと好きだったし、2人きりの空間はとてつもなく居心地が良かった。それがずっと続くものだと、信じていた。
貴方の隣で見た事のない彼女が笑っていた時、私は何も感じる事が出来なくなった。
一つ一つ証拠を集めて、貴方の全てを知ってしまったのが、2人にとっての終わりのきっかけだったんだろう。
部屋にひとりきり。メッセージアプリ内でも、私の言葉ひとつきり。もう貴方は傍にいない。
出来ることならこれからも、貴方の隣で笑いたかった。叶わない願いを私は抱き続けている。
――だけど、それももうさようなら。私は貴方の存在ごと捨ててしまうから。
チラッとだがスマホを覗くと、見慣れた貴方のアカウントからの新着メッセージ。
通知が来る度にどのタイミングで既読をつけるか迷うような、甘い恋をしていた過去。
……そんな過去、存在していただろうか。
『仲直りしたい』
その楽観的で馬鹿みたいな言葉には、永遠に既読がつくことはない。

9/20/2025, 10:12:52 AM