創作怪談 「怖がり」
谷折ジュゴン
廃校舎の窓から漏れる、懐中電灯の光が揺れた。時は夜の1時30分。塗り込められたような闇が1人の調査員を包んでいる。
ぎし、ぎしと朽ちた床板の上を歩きつつ彼は心細げに懐中電灯を右へ左へ向ける。ふと、手が止まりある一点を照らした。
ひときわ闇が深い教室の隅で何か、動いた気がしたのだ。彼は目を凝らして闇の中を見る。
そこにいたのは女だった。身長が3メートルを越える、やたらと腕の長い女がつっ立って何かぶつぶつ言っている。彼は女の顔を確認するため懐中電灯の光を上へ向けた。
しかし、女には首から上がなかった。
「みつけた」
そう言いながら女がゆらゆらとこちらへ向かって来る。彼は震える足で来た道を戻った。
「うぅ嘘だろう?!」
女が目の前に立っている。彼は踵を返し廃校舎の奥へ走った。だが、床板を踏み抜き足がはまって転んでしまう。
「おいっ、よせ、く」
後日、首の無い霊が出ると噂の廃校舎に1人の青年が訪れた。
(終)
3/16/2024, 11:42:50 AM