のねむ

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貴方の声が聞こえる。幻聴なのは、分かっては居るがそっと聞こえた方向を見てみた。が、やはりそこには誰も居らずただそよ風に乗ってカーテンが揺れているだけだった。

そういえば、貴方の部屋にはカーテンが無かったことを今思い出した。日差しが強い日でも、豪雨の日でも、どれだけ朝日が早く出る時だって貴方の部屋にはカーテンがなかったから、それが可笑しくて笑ってしまった。少し、変わっている人なんだと思うけれど、私はそこもきっと、大好きだった。


貴方の声は、深夜の本当に数人しか聞いていないようなラジオから流れていそうだと思う。万人受けするような声では無いけれど、だけど私のような寂しく沈んだ夜に耐えられないような人達には、救われるような、傍に居てくれるような、御伽噺のような声に聞こえていた。
ずっと傍にいる訳では無いけれど、祖父の家に遊びに行った先の神社の中の大きな木の影で、見つけ出した人間か分からぬような存在。たった、ひと夏の記憶な筈なのに、永遠に心の奥に残る。トラウマにも似た、そんな感覚なのだ。
きっと、笑われてしまうかもしれない。
たったひと夏の、たった一瞬の存在に捕らわれるような私を、貴方に、もしくは貴方では無い誰かに、笑われてしまうかもしれない。
けれど、忘れることは出来ないのだから、仕方がない。


そういえばそんな貴方は、「人はとても美しい」と言っていた。
貴方の心が美しいから、美しく見えているだけだと思った。心の汚い私には人はとても醜く愚かに見えるから。そう言うと、貴方は笑って
「勿論、愚かだなとも思うけれど。それでも、いや、それだからこそ、美しいんだよ。」と、言った。
その声色が、何処か悲しそうでだけど愛おしそうで、胸が苦しくなる。けれど、その言葉に共感することは出来なかった。

私は人の汚い所を沢山見てきたし、私もそんな汚さを溜め込んだ様な人間だ。ちょっとした事で直ぐに揺れ動く心も、弱い心のせいで強者に頭を下げ続ける心も、全て醜いと思った。
何時だって、今の自分の足を引っ張るのは、過去の自分だ。その愚かさが嫌いだった。
そんな人間を、それでも貴方は美しいと言った。

「揺れ動く心も、媚びへつらう姿も、自分の為、他者の為。人間故の行動だからね。単調さは面白くも無ければ、美しさも見出せない。その愚かさや醜さが合ってこそ、人間は完成する。だから、ね?美しいでしょう。」

やはり、何処か悲しく愛おしい声色で、だけど晴れやかに笑ってそう言う貴方に、やっと私は「まあ、確かに」と、共感出来たのだった。





貴方は、人間が好きで、だけどとても嫌っていた。それは多分自分自身にもそうだったと思う。
それ故に、人間の良し悪しをずっと見つめていたのだろうか。私よりも何歩も先の景色を見てきたのかと思うくらい、大人びた(というよりも人外じみていた気もする)言葉を吐き出し続けていた。



貴方は自分の声が苦手だと言っていた。
けれど全て貴方の声だったからこそ、覚えていた。寂しい夜に何となく聞いた、ラジオから流れてきた何気ない寄り添う言葉のようで。
たったひと夏の事なのに、心に永遠と残る出来事のように、貴方の声が私の心に大きな傷を残していった。
大きな傷は治ったって、跡は残る。その跡のせいでずっと記憶が着いて回る。苦しいけれど、そんな苦しさが貴方の形を綺麗に成しているようで、とても好きだ。
貴方は消えたけれど、貴方の言葉や貴方への感情はずっと残っている。
今も、ずっと耳奥で木霊する貴方の声は、私をクスクスと笑っているような気がした。






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お久しぶりです。
すみません。何も書けないようになってしまいました。だから何となく気持ちを吐き出してみました。
なので、特になんの意味もない空っぽの文字です。ただただ、思いをつらつらと書いただけです。起承転結もない私の人生のような文。


多分、きっと、気がした、そんな曖昧な言葉が好きです。私自身が曖昧で、形を成していないような人間だから、です。そんな私の中に唯一しっかりと形を成しているのが、貴方からの全てで、そんな貴方が消えた今も貴方を消せない私はとても、愚かで醜い。勿論、揺れ動く心も媚びへつらう心も持っている。けれど、そんな私を貴方はきっと今も「美しい」と笑うのだろうな、と心の中にいる貴方を通して思います。


貴方の声が、笑い声が今も消えないのです。
思い出して泣くことは少なくなったけれど、やっぱり、息苦しいです。
この前、バ先の先輩が私のコンプレックスに触れてきました。話題に少し出ただけ、けれど、その少しで私は体の感覚が無くなるくらいのものでした。
こんな時、貴方が居れば、笑って忘れることが出来たのだろうと思います。

例えば、もう二度と、貴方に会えないとしても、貴方が何処かで前みたいに笑っていてくれれば、それだけで私の人生はハッピーエンドです!!

9/22/2023, 3:46:50 PM