白糸馨月

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お題『好き嫌い』

 最近話題になっている花屋がある。とある魔術師が店主をしているのだが、いわゆる『花占い専門』の花屋で客から花を選ぶことはできず、店主が花を選んで渡してくれるらしい。
 ちなみに花占いにつかった花は、花びらをすべて取り終わったら消える仕組みとのことだ。
 今、僕の手元にはその花屋で買ったうすいピンクのガーベラの花がある。

「かならず好き、嫌いの順で花びらを一枚ずつとってください」

 そういう決まりなのだそうだ。僕はいぶかしみながら花びらを一枚ずつむしる。
 あたまのなかにある女の子のことを思い浮かべながら。そういえば、このガーベラの色は彼女の雰囲気にとても似合っている。

すき、きらい、すき、きらい

 最後に一枚花弁が残った。これをとったら「すき」ということになる。

「そんな、まさか」

 僕は、最後の一枚をむしると、ガーベラは消えた。

(ほんとうにあの子は僕のことを好きなのだろうか?)

 正直、疑わしい。そう思っていると、たまたま制服姿の女の子が物陰に隠れている僕を見ていた。まさしく僕が頭のなかに思い描いていた女の子で、恥ずかしさで体が熱くなった。
 その場から急いで逃げようとすると、女の子に腕をつかまれる。

「待って! 話があるの」

 そう言った彼女の頬はどこか赤く見えた。僕は期待と不安が入り混じった気持ちになる。もしかしたら、花占いは当たってるのかもしれない。もう覚悟を決めよう。

「僕も話があるんだ」

 どうか彼女の話したいことと僕の話したいことが同じでありますように。そう願いながら僕は彼女に想いを伝えた。

6/13/2024, 3:43:58 AM