"一筋の光"
あれはいつのことだったろうか。もう思い出すこともできないほど遠い昔、暗闇を一人彷徨っていた。自身の指先までがギリギリ視認できる範囲だ。
暗い、寒い、何も聞こえない。ここはどこなのか。どれだけ歩いても何かに当たることはなく、何かが見えるようになることもない。もう動く気力は尽きてしまった。その場に横たわり、自身を包み込む闇に溶けていく。あぁ、動くことを諦めるのは、思考を放棄するのはこんなにも楽なのか。いっそこのまま、、、このまま、
キエテシマエバイイノニ
気づけば自身の腕すら見えなくなっていた。
その時、遠くの方に一筋の光が指していることに気付いた。疲れ果てたこの体で移動するには気の遠くなるほどの距離だろう。それでも動くことを諦めるより、思考を放棄するより、光の正体を見てみたいと思ってしまった。一度そう思ってしまえば、夢を見てしまえば、諦めることなど到底できなくて。これからも私は歩き、それができなければ這ってでも光に向かっていくほかないのだろう。
11/6/2024, 5:39:13 AM