世界のおわり

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《刹那》
私の主と結婚された美しい奥様は、いつも主に白色のつぼみの花が刺繍された贈り物を送る。
学がない私に奥様は花の名前はスズランというのだと教えてくださった。
いつも主には「しあわせが訪れるという伝説があるのよ」と説明なさっていた。
それに主が「今が1番十分に幸せだ」とお返しになるのがいつもの光景だった。
「私には信じられない程長い時を送るあなたたちには私との時間は本当に一瞬、刹那の出来事よ」
そっと秘密を告白するように奥様は私に仰った。
私は我儘なのよ。
だから、白色を見る度に、せめて白色の花を見る度に、私を思い出して欲しいの。
そうほんわかと微笑む奥様に、「そうですね」と返すしかなかった。

ねぇ、奥様。
そんなことをなさらなくても、主は一瞬たりともあなたのことを忘れることはありません。
それにね、奥様がいないと主は二度と幸せになれませんよ。
奥様は主の唯一の番なのですから。



『鈴蘭の花言葉が書かれたページを眺め続けるとある侍従の過去の記憶』

4/28/2026, 11:16:20 AM