正直に言おう。僕は君のことが嫌いだ。
素直で、嘘が下手くそで、周りに好かれている。
そんな君が、大嫌いだ。
人の顔をよく見て、空気をこれでもかと読んで。
他人の好き嫌いは暗記して、常に笑顔を絶やさず。
周りの目をずっと気にして生きていた。
誰にも本音を吐けず、さらけ出せなくて。
自分を殺して、相手を思いやる事に全力を尽くす。
誰の為に生きているのか、分からなくなっていた。
君の嘘偽りない笑顔を見ると、
嘘で塗り固まった僕が、愚かしく思えて。
君の心からの称賛を聞くと、
胸の奥が酷く抉られたように痛んで。
君の曇りなき瞳に映る僕は、
何よりも醜い化け物に見えるんだ。
君を見る度に妬んでしまう。
そんな僕が、本当に惨めで。
それなのに、君は僕に向かって言うんだ。
「正直になりなよ。」
腹が立ったよ。煮えくり返りそうだった。
こっちの気も知らないで、
よくも軽々しく言ってくれたなって。
思わず怒鳴ってしまいそうになった。
でも思い返せば、自分のこと誰にも話せてなかった。
そりゃあ、僕の気持ちなんて知ったこっちゃないか。
君とはきっと分かり合えない。
人の顔色を伺わずにはいられないし、
偽物の笑顔は治りそうもない。
何度だって君を妬むし、羨んで、憎んでしまう。
それでも、君には僕を知って欲しいと思ったんだ。
君にだけは正直になろう。
僕は君のことが大嫌いだ。
なんだか、心が晴れた気がした。
6/3/2024, 2:58:37 AM