桜散る
「ねぇ、私と付き合って。」
彼女には1週間でやりたい事があるそうだ。なぜ、1週間なのかはわからない。詳しく聞こうとすると、はぐらかされる。だけど、彼女は僕にこう言った。
「私と付き合うっていうのは、あくまでやりたいことを一緒にする人って事。だから、何があっても私のことを好きにならないでね。これだけは、絶対。」約束は守るし、君のことを絶対に好きにならない…そう思っていた。
1日目
「男の子と遊園地デート!」パシャッ
2日目
「図書館で勉強会…とデート!」パシャッ
3日目
「公園でピクニック!あっ!あとフリスビーで遊ぶ!」パシャッ
4日目
「熱が出たっていう設定で、私が君を看護する!」
「どんな設定だよ…」パシャッ
5日目
「映画館で2本映画を連続で見て、その後ゲームセンターデート!」
6日目
「お家デート!」パシャッ
7日目
「今日までの事をお互いに手紙を書く!中身は、今見ちゃダメッ!」パシャッ
…この7日間ずっと彼女がやりたいことを僕と一緒にやってきた。デートばっかだったけど、常に笑顔だったから彼女の写真を撮っておいた。久しぶりに、こんなにも楽しかったな。と手紙を書いた帰りに思い出を振り返っていた。来週も、なんかやらないかな?次は自分のやりたいことを一緒にやろうって誘おうかな?
僕は、いつの間にか君の虜になっていた…
8日目
プルプルプル…プルプ…ガチャ
「はい。はい。そうですけど…何かありましたか?えっ?…し、失礼します。」ガチャ
電話がかかってきた。病院からだった。"彼女が今日の朝亡くなったと"いう知らせだった。
彼女は、病気だったらしい。僕と付き合う3日前に、もう残り時間は少ないと伝えたら「まずは、1週間やりたいことをやりたい。」と言っていたそうだ。僕は「じゃあ、寿命だったんですね…」と言ったら、「そうじゃないんだ、屋上から飛び降りたんだよ…」と医師は言った。僕は「は?どういうことですか?」と聞くと、「彼女の机にメモがあってね、そこには"これ以上あの人と一緒に居たら死にたくなくなっちゃう。だから、楽しい記憶だけのときに…」と言った。僕は、現実が受け止められなかった。とりあえず、彼女のお通夜に行く準備をする…
お通夜に行った帰り、彼女がくれた手紙を思い出して開けてみた。僕は、ハッとして息を呑んだ。そこには
"大好き。好きにならないでって言ったのに、自分が好きになっちゃった。楽しかった。ありがとう。"
短い文章ではあったが僕は、嗚咽と涙が止まらなかった。
「僕も、君のことが大好きだ…」と言いながら僕は、その場に膝をついた。
桜散る夜にもう会えない彼女を思い、涙が止まるのを待っていた。
4/17/2024, 1:08:07 PM